だれでも書ける! 今年の感想文はコンクールレベルを目指せ!
夏休みの定番、読書感想文。
「青少年読書感想文全国コンクール」は、1955年から続いている歴史ある読書振興活動です。
夏休みはやりたいことが沢山あるし、読書感想文は時間をかけずに終わらせたい!
でも、どうせやるなら良い評価をもらいたい!
今回はそんなあなたに、元国語科の教員として500以上の感想文を読んだ経験から、
「だれでも書ける! 今年の感想文はコンクールレベルを目指せ!」を紹介します♬
もくじ
1 本を選ぶ
本には、「感想文向き」のものとそうでないものがあります。
まずは、感想文が書きやすい本を選びましょう。
□登場人物と自分に共通点がある
物語でもノンフィクションでも、登場人物に共感できる本を選ぶのが良いでしょう。
伝記など、ある人物に焦点があてられていると、
「その人物の言動についてどう思うか」という自分の考えを書きやすいです。
□自分自身が興味を持って読める
感想文は、必ずしも「この夏読んだ本」で書く必要はありません。
「小さい頃から繰り返し読んできたあの本」や「悩んでいたとき背中を押してくれた本」など、
自分にとって本当に大切な本で、自分にしか書けないような文章を目指してみましょう。
★これでコンクールレベル!★
□社会や人間の本質につながる本
現代社会で問題になっていることや、
人間が生きる上で直面するテーマを取り上げた本を選ぶと、
深い感想を書くことができます。
例えば、山中恒『おれがあいつであいつがおれで』ではジェンダーギャップについて考えることができますし、
宮沢賢治『注文の多い料理店』では自然と人間の共存について思いをめぐらすきっかけを得られるかもしれません。
さらに、「本当に生きるとはどういうことか」「大人になるとはどういうことか」など、
抽象的なテーマについて考えさせられるような本は、深い感想を書くのにぴったりです。
ミヒャエル・エンデ『モモ』から「効率ばかり追い求めず、待つことの大切さ」について書くなど、
ファンタジー小説やSF小説を現実のテーマに引き付けて書くのも良いですね。
□登場人物が、抱えている問題と向き合い成長する本
基本的に感想文は、本を読んだことを通して自分自身がどのように成長したのか、
どのような学びを得たのかを書くものです。
ですので、登場人物の抱えている心の葛藤を、自分の心の葛藤と重ね合わせ、
登場人物の問題との向き合い方について自分はどう思うか、
似たような体験があったときに自分はどうしたか、したいかが書きやすいと、
スムーズに書き進めることができるでしょう。
2 本を読む
本を読むときは、必ず付箋と色ペンを用意しましょう。
そして、印象に残った台詞や表現にどんどん印をつけましょう。
思い出した自分の体験や普段からの思いなどがあれば、本の余白や付箋に書き込みながら読みます。
★これでコンクールレベル!★
本を読んで思い出した自分の体験や、
登場人物の言動に対しての自分の思いをメモしましょう。
自分の思いをメモするときは、「自分らしさとは」「言葉の力とは」など、
「〇〇とは」形式で書けると具体的な物語を抽象化しやすく、深い感想文になります。
3 書きたいこと・伝えたいことを絞る
本を読むと、色々な感想を抱きます。
例えば『ハリー・ポッターと賢者の石』を読んだら、
「魔法のような才能が自分にもあるかもしれない」とか、
「ホグワーツに行ってみたい」とか、「自分は多分ハッフルパフ生だと思う」とか、
「マクゴナガル先生の学生時代が知りたい」とか……。
沢山の感想があるということは、それだけ豊かな読書体験だったということでしょう。
しかし、読み手の印象に残る文章を目指すには、あえて書きたいことをひとつに絞りましょう。
「ひとつに絞る」とは具体的にどうすることか。それは「一文にまとめる」ということです。
例えば、
「ホグワーツでハリーが手に入れた最も大切なものは、魔法の力ではなく友人だ。」とか、
「魔法は素晴らしいものだが、使い方を間違えてはいけない。」とか。
「結局何が良いたい文章なのか」がはっきりしていると、全体の構成も立てやすくなります。
★これでコンクールレベル!★
ここで、2で紹介した「〇〇とは」形式のまとめ方をすると、深い感想文になります。
例えば、
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の感想を一文にまとめると、「生きるとは、誰か自分以外の人を生かすことだ」。
などとまとめることができるでしょう。
そして、その一文が心に浮かんだ理由を考えます。
「カムパネルラは、意地悪なザネリを助けるために命を落としてしまう。
しかし、それによってジョバンニの心の中に生き続ける。だから、
誰かのための行いや、誰かを生かす行為が、真の意味でその人を『生き』させるのだと思った」
このような感じです。
4 書き出しを考える
書きたいこと・伝えたいことが決まったら、書き出しを考えましょう。
本を手に取るときにタイトルやカバーが重要なくらい、感想文にとって書き出しは重要です。
よくあるのが、「その本を読んだきっかけ」から書き始めることです。
しかし、これはあまりおススメしません。
なぜかというと、「読んだきっかけ」は、3で決めた「書きたいこと・伝えたいこと」に関係ないことが多いからです。
★これでコンクールレベル!★
読む人を「おっ」と思わせる書き出しパターンを、いくつか紹介しましょう。
□印象的な台詞や表現の引用から始める
例1:「千里の道も一歩から」。太郎がつぶやいた言葉だ。
例2:「本当の自分はいつも足元にいるわ」これはアンナがミーナに言った言葉です。
「どんな場面で言った言葉だろう?」と本のあらすじに興味を抱かせる書き出しです。
自分がその場面を読んで思ったこと、にも話がつなげやすいですね。
□自分の紹介から始める
例1:僕は友人を作るのが得意ではない。
例2:医者になる。それが私の小さい頃からの夢だった。
感想文の主人公であるあなたが、本を読んでどう成長していくのか興味を抱かせる書き出しです。
□クライマックスといえる場面の感想から始める
例1:負けるな、僕は太郎に心の中で呼びかけた。
例2:本当の友達だったら、そんなことは言わないのではないか。私は思った。
どんな場面の感想だろう? と興味を抱かせる書き出しです。
□指示語から始める
例1:その人はいつも笑っていた。みんなに見捨てられたときも。
例2:そのとき、クラスを覆っていた重い雰囲気が一変した。
「その」という言葉を使うと、それが指す物語の内容に興味が湧きます。
□結論から始める
例1:魔法とは技術ではない。心の在り方なのだ。私はこの本を読んでそう思いました。
例2:本当の意味で生きるとは、自分ではない誰かを「生かす」ことなのだ。この本は僕にそう気づかせてくれた。
なぜ、どんな話を読んでそう思ったのだろう? と興味を抱かせる書き出しです。
5 構成を考える
感想文に書きたいことと書き出しが決まったら、それを効果的に伝える構成を考えてメモしましょう。
「構成を考える」とはどういうことか。それは、書く内容の順序と分量を決めるということです。
ここでいう「書く内容」とは、基本的に下の4つです。
この4つは、「感想文の基本要素」といって良いでしょう。
これを、どのような順番で組み立てるかを考えます。
基本的な文章の型としては、頭括型・双括型・尾括型があり、
このいずれかで考えるのが書きやすいでしょう。
□頭括型
文章の頭(最初)に結論のある構成。
この場合、④→①→②・③といった構成になります。
□双括型
文章の頭(最初)と尻尾(最後)に結論のある構成。
この場合、④→①→②・③→④といった構成になります。
□尾括型
文章の尻尾(最後)に結論のある構成。
この場合、①・②・③→④といった構成になります。
まずは、④の伝えたいことをどこに置くかを考えましょう。
このとき、文章の書き出しが決まっていると決めやすいですね。
★これでコンクールレベル!★
「構成を考える」とは、書く内容の順序と分量を決めるということです。
書く順番と同様に、内容によって書くべき分量に配慮すると、バランスの良い文章になります。
①本のあらすじ
形式段落で1段落、2・3文で簡潔にまとめましょう。
また、このように簡潔にまとめた感想は、感想文の序盤に置いたほうが、
大体どのようなストーリーの感想なのか念頭に置きながら読めるのでバランスが良いです。
②特定の場面の感想
取り上げる場面は、2~3場面に絞りましょう。
1場面だと少なすぎ、4場面以上だと多すぎます。
ここでは、①では紹介しきれなかった物語の読みどころを、具体的に挙げましょう。
本で使われている台詞や特徴的な表現を取り入れると、本の持つ雰囲気も伝えることができて効果的です。
本を読むときに付箋を貼っておき、確認しながら書けるようにしましょう。
③関連する自分の体験や考え
基本的には1つの体験に絞りましょう。
いくつも自分の体験を挙げると、登場人物の体験と混ざって、分かりにくくなってしまいます。
「体験」ではない「普段からの考え」でも良いです。
「環境問題についての考え」など、社会的な問題に対する意見でも良いでしょう。
この、自分の体験や考えを、「② 特定の場面の感想」と合わせて書くのがおすすめです。
例えば以下のような書き方です。
「私の目指すアナウンサーと同じように、花子は記者という仕事で『人に伝える』という役割を果たしている。
花子が『取材ではメモを取らない』と言ったとき、私は驚いた。人に伝えるには、
事実を詳細に把握することが大切だと思っていたからだ」
登場人物に自分を重ねて、物語の場面に対する自分の感想を書いていくと書きやすいです。
感想文は、②・③に最も多くの枚数を割くと、一番バランスよく仕上がるでしょう。
④伝えたいこと
1段落程度でまとめましょう。あまり長々と書きすぎると、「結局何が言いたいのか」がぼやけてしまい、
分かりにくい文章になってしまいます。
「双括型」の構成にする際には、同じ表現にせず、少し言い回しを変えると、
書きなれた感じの文章になります。
6 書く!
ここまで準備を整えたら、実際に書いてみましょう。
書き出しが決まっていて、書くことと書く順序・分量が決まっているので、
スムーズに質の高い文章が書けるはずですよ。
いかがだったでしょうか。
せっかく夏休みの大切な時間を使って感想文を書くからには、
読む人に「おっ」と思わせるような、良い感想文にしたいですよね。
この記事で、これまで「どう書けばうまく書けるのか分からない……」と抱えていたモヤモヤが、
少しでも晴れたなら嬉しいです。
[今回の執筆者]
イニシャル:N
所属:編集部
前職:中学校国語科教諭
愛読書:L・Mモンゴメリ『赤毛のアン』
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