枕草子とは? 枕草子の世界をやさしく解説!

枕草子って何?
枕草子(まくらのそうし)は、日本を代表する文学作品です。文章のジャンルは随筆。随筆とは、筆者が感じたことや考えたことを自由に書いた文章のことです。物語のような作り話ではなく、筆者が実際に体験したことが書かれています。
いつ、誰が書いたの?
枕草子は今から約1000年前の平安時代に、清少納言(せいしょうなごん)という女性が書きました。
平安時代、政治や文化の中心は京都でした。京都には、天皇が住んで仕事を行う、宮中(きゅうちゅう)という場所がありました。清少納言も宮中で働いており、一条(いちじょう)天皇のおきさきである定子(ていし)に仕えていました。
宮中には、貴族と呼ばれる人たちも暮らしており、貴族は天皇とともに政治を行うだけではなく、和歌をよんだり、音楽を楽しんだりしていました。貴族によって、平安時代の文化がつくられていったのです。

どんな本なの?
枕草子には、清少納言が宮中での暮らしの中で感じた、さまざまなことが書かれています。たとえば、季節の美しさや、空や月、雪など自然の美しさを語っていたり、宮中での出来事や貴族たちの暮らしについて語っていたりします。また「うれしいもの」や「かわいらしいもの」といったテーマについて語っているところもあります。
枕草子を読むと、平安時代の人々の暮らしの様子がわかるほか、清少納言のものの感じ方を読み取ることができます。
枕草子にはどんなことが書いてあるの?【内容を紹介】
それでは、実際にどんなことが書かれているのか、枕草子の世界をのぞいてみましょう。
①季節や植物、動物についての感想
清少納言は、春夏秋冬の美しい時間帯をそれぞれ次のように書いています(有名な「春はあけぼの」という章段です)。
・春…明け方。夏…夜。秋…夕暮れ。冬…早朝。
また、植物や動物について、よいところを次のように書いています。
・木の花…紅梅(色が薄くても濃くてもよい)、桜…(花びらが大きく葉の色が濃いものが、細い枝に咲いているのがよい)

・鳥…オウム(人の言葉をまねするところがおもしろい)

・動物…猫(上のほうが黒くて、おなかが白い猫がよい)
このようにさまざまなものに対して、清少納言の感じ方が書かれています。
②好きなもの・嫌いなものリスト
枕草子には、清少納言が自分の好き嫌いを書いている章段があります。
★うれしいもの★
・読みたかった物語の、続きの巻を見つけたとき。
・大切な人の病気がよくなったとき。
・好きな人がほめられたとき。
・探し物を見つけたとき。
・勝負に勝ったとき。
・「自分こそは」と得意な顔をしている人に仕返しできたとき。
★にくらしいもの★
・急ぐ用事があるのに、家にきて長話をする客。
・カラスが群れをつくって飛び交い、騒がしく鳴いているとき。
・眠くて横になっているのに、蚊が顔の周りを飛び回るとき。

・出しゃばって話をする人。
・犬が何匹も、長々と吠えているとき。
・出入りするところを開けたままにする人。
清少納言の素直な思いを感じることができます。現代にも通じるところがあって、おもしろいですね。
③宮中での出来事
清少納言が宮中で定子に仕えていた時の思い出を、日記のように書いている章段もあります。たとえば、雪がとても高く降り積もった日のエピソードとして、清少納言はこんなことを書いています。

「香炉峰」とは、中国の詩人がよんだ歌に出てくる山のことです。歌では「香炉峰に積もった雪を、御簾をあげて眺める」という一節があります。このことをふまえて、清少納言は、定子の問いかけの裏にあった「外の景色が見たい」という思いをくみ取ったのです。
定子は、清少納言の機転を利かせた行動に満足し、周囲にいた人々からも清少納言への賞賛の声があがりました。
清少納言の知識の豊富さと、頭の回転の良さを感じさせるエピソードです。
「春はあけぼの」の章段を読んでみよう!【全文+意味】
清少納言がそれぞれの季節の好きな時間帯を書いた、「春はあけぼの」を古文で読んでみましょう。

古文を読んでみよう
「春はあけぼの」の古文を読んでみましょう。読み方は古文の下にあります。

声に出して読んでみましょう。音読してみると、古文特有のリズムの良さが感じられます。

現代語訳(現代の言葉で言うと)
上の古文を、現代の言葉にすると、次のようになります。比べてみましょう。

清少納言が伝えたかったこと
清少納言は、それぞれの季節で、一番美しいと感じる時間帯を書いています。短い文章ですが、それぞれの季節の風景が浮かんできますね。
テストに出る! 覚えておきたい古文の言葉
古文には、現代では使われていない言葉や、現代とは意味が異なる言葉があります。ここでは古文でよく出てくる言葉を紹介します。
「いと」=とても、すごく
最もよく出る言葉の一つが「いと」です。意味は、「とても、たいそう」。「春はあけぼの」でも、「いと小さく」「いと白き」など複数出てきます。
「をかし」=趣がある、すてきだ
「をかし」も、最もよく出る言葉の一つです。現代の「おかしい、変だ」という意味ではなく、「心がひかれる」「よい感じがする」という意味の言葉です。
清少納言は、自然や人のふるまいなどを見て、「をかし」と感じたことを枕草子にたくさん書いています。
「あはれ」=しみじみと心が動く
もう一つ、古文でよく出る言葉である「あはれ」を紹介します。
「あはれ」には「感動すること」「かわいそう、せつない」などの意味があります。うれしい気持ちだけでなく、さびしさや悲しさも含めて「心に深く感じる」という意味を表しています。「をかし」と似ていますが、「あはれ」はさびしさや悲しみで心が動くときに使われるところが特徴です。
枕草子の何がすごいの?【3つのすごいポイント】
枕草子は日本三大随筆の一つと言われています。一体、枕草子の何がすごいのでしょうか? ここからは、枕草子の「すごい!」ポイントにせまります。
①約1000年前の「日常」がわかる
清少納言は枕草子の中で、宮中での仕事や行事、貴族たちの会話、着物や手紙のやりとり、季節の楽しみ方、日々の食事など、生活の様子をくわしく書いています。また、平安時代の人が、どのような景色を美しいと思ったのか、どのようなことを楽しいと感じていたのか、どのような人がすてきだとされていたのか…など、当時の人々のものの考え方も書いています。
枕草子を読むと、当時の人々の暮らしや、価値観を知ることができます。
清少納言は、自分が見たことや感じたことをくわしく書いているので、まるでタイムマシンのように、平安時代の世界をのぞくことができるのです。

②正直でおもしろい! 共感できる
清少納言は、自分が感じた「好き・よい」「嫌い・だめ」をはっきりと書いています。
ひよこが鳴く様子はかわいい、定子様にほめられてうれしい…
といったポジティブなことを書いている一方で、
寝ようとしたときに顔の周りを飛ぶ蚊にイラつく、好きな人が元カノのことをほめるのはムカつく…
といったネガティブなことまで、素直な気持ちをつづっています。
現代のSNSやブログと書いていることは変わらないかもしれません。
私たちと同じように、自分の気持ちを素直に書いていて、共感するところもたくさんあります。
約1000年前に生きていた清少納言と思いがつながるのは、不思議な気がしますね。

③短くて読みやすい
枕草子は、一つの長い話が続くのではなく、短い文章がたくさん載っています。一つ一つの話が短いので、気軽に読むことができます。
また、前から順番に読む必要もないので、読みたいところや気になったところだけを読むこともできます。

作者の清少納言ってどんな人?
枕草子を書いた清少納言は、どんな女性だったのでしょうか。清少納言の人物像にせまります。
頭がよくて、勉強が得意な女性だった
清少納言という名前は、宮中でよばれていた名前で、本名はわかっていません。
父親は有名な歌人でした。清少納言は小さい頃から和歌や漢字、文学に親しみながら育ったと考えられています。
定子に仕えていた
清少納言は、和歌や漢詩の知識が豊富で気のきいた会話も得意だったことから、定子にとても信頼されていたと言われています。また、枕草子の中で清少納言は、定子のことを「やさしい、気品がある、教養が深い」などと称賛しています。定子に関する記述もたくさんあることから、清少納言が定子を尊敬していたこと、二人の仲がとても良かったことがわかります。

紫式部と清少納言
同じ時代にもう一人、活躍した女性がいます。「源氏物語」(げんじものがたり)という小説を書いた紫式部(むらさきしきぶ)です。
紫式部も宮中で働いていましたが、紫式部は、彰子(しょうし)という別のおきさきに仕えていました。定子と彰子のまわりには、それぞれすぐれた人たちが集まっており、比べられることもありました。
こう聞くと「もしかして、清少納言と紫式部はライバルだったの?」と思う人もいるかもしれません。
紫式部は自分の日記に、清少納言のことを「頭がよくて才能がある」とほめる一方、「少し自慢しすぎることがある」と書いていますが、実際にライバルとして競い合っていたかはわかっていません。しかし、日記に書くくらいですから、意識していたのかもしれませんね。
まとめ 枕草子を読んでみよう!
いかがでしたか? 約1000年も昔に書かれた枕草子。「昔すぎて、読んでもわからないことだらけでは?」と思いがちですが、今読んでもクスっと笑えるところがあったり、清少納言の感性や考え方にも共感できるところがあったりと、とても楽しむことができる作品です。
おもしろい章段がたくさんあるので、気になった章段をぜひ読んでみてください!
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