2026/06/26

枕草子とは? 枕草子の世界をやさしく解説!

 

 

枕草子って何?

枕草子(まくらのそうし)は、日本を代表する文学作品です。文章のジャンルは随筆。随筆とは、筆者が感じたことや考えたことを自由に書いた文章のことです。物語のような作り話ではなく、筆者が実際に体験したことが書かれています。

いつ、誰が書いたの?

枕草子は今から約1000年前の平安時代に、清少納言(せいしょうなごん)という女性が書きました。

平安時代、政治や文化の中心は京都でした。京都には、天皇が住んで仕事を行う、宮中(きゅうちゅう)という場所がありました。清少納言も宮中で働いており、一条(いちじょう)天皇のおきさきである定子(ていし)に仕えていました。

宮中には、貴族と呼ばれる人たちも暮らしており、貴族は天皇とともに政治を行うだけではなく、和歌をよんだり、音楽を楽しんだりしていました。貴族によって、平安時代の文化がつくられていったのです。

   

 

どんな本なの?

枕草子には、清少納言が宮中での暮らしの中で感じた、さまざまなことが書かれています。たとえば、季節の美しさや、空や月、雪など自然の美しさを語っていたり、宮中での出来事や貴族たちの暮らしについて語っていたりします。また「うれしいもの」や「かわいらしいもの」といったテーマについて語っているところもあります。

枕草子を読むと、平安時代の人々の暮らしの様子がわかるほか、清少納言のものの感じ方を読み取ることができます。

 

 

枕草子にはどんなことが書いてあるの?【内容を紹介】

それでは、実際にどんなことが書かれているのか、枕草子の世界をのぞいてみましょう。

 

①季節や植物、動物についての感想

清少納言は、春夏秋冬の美しい時間帯をそれぞれ次のように書いています(有名な「春はあけぼの」という章段です)。

 

・春…明け方。夏…夜。秋…夕暮れ。冬…早朝。

また、植物や動物について、よいところを次のように書いています。

・木の花…紅梅(色が薄くても濃くてもよい)、桜…(花びらが大きく葉の色が濃いものが、細い枝に咲いているのがよい)

  

 

・鳥…オウム(人の言葉をまねするところがおもしろい)

 

 

・動物…猫(上のほうが黒くて、おなかが白い猫がよい)

 

このようにさまざまなものに対して、清少納言の感じ方が書かれています。

 

②好きなもの・嫌いなものリスト

枕草子には、清少納言が自分の好き嫌いを書いている章段があります。

 

★うれしいもの★

・読みたかった物語の、続きの巻を見つけたとき。

・大切な人の病気がよくなったとき。

・好きな人がほめられたとき。

・探し物を見つけたとき。

・勝負に勝ったとき。

・「自分こそは」と得意な顔をしている人に仕返しできたとき。

 

★にくらしいもの★

・急ぐ用事があるのに、家にきて長話をする客。

・カラスが群れをつくって飛び交い、騒がしく鳴いているとき。

・眠くて横になっているのに、蚊が顔の周りを飛び回るとき。
  

・出しゃばって話をする人。

・犬が何匹も、長々と吠えているとき。

・出入りするところを開けたままにする人。

 

 清少納言の素直な思いを感じることができます。現代にも通じるところがあって、おもしろいですね。

 

③宮中での出来事

清少納言が宮中で定子に仕えていた時の思い出を、日記のように書いている章段もあります。たとえば、雪がとても高く降り積もった日のエピソードとして、清少納言はこんなことを書いています。

 

 

「香炉峰」とは、中国の詩人がよんだ歌に出てくる山のことです。歌では「香炉峰に積もった雪を、御簾をあげて眺める」という一節があります。このことをふまえて、清少納言は、定子の問いかけの裏にあった「外の景色が見たい」という思いをくみ取ったのです。

定子は、清少納言の機転を利かせた行動に満足し、周囲にいた人々からも清少納言への賞賛の声があがりました。

清少納言の知識の豊富さと、頭の回転の良さを感じさせるエピソードです。

 

 

「春はあけぼの」の章段を読んでみよう!【全文+意味】

清少納言がそれぞれの季節の好きな時間帯を書いた、「春はあけぼの」を古文で読んでみましょう。

  

 

古文を読んでみよう

「春はあけぼの」の古文を読んでみましょう。読み方は古文の下にあります。

 

 

声に出して読んでみましょう。音読してみると、古文特有のリズムの良さが感じられます。

  

 

現代語訳(現代の言葉で言うと)

上の古文を、現代の言葉にすると、次のようになります。比べてみましょう。

 

 

清少納言が伝えたかったこと

清少納言は、それぞれの季節で、一番美しいと感じる時間帯を書いています。短い文章ですが、それぞれの季節の風景が浮かんできますね。

 

 

テストに出る! 覚えておきたい古文の言葉

古文には、現代では使われていない言葉や、現代とは意味が異なる言葉があります。ここでは古文でよく出てくる言葉を紹介します。

 

「いと」=とても、すごく

最もよく出る言葉の一つが「いと」です。意味は、「とても、たいそう」。「春はあけぼの」でも、「いと小さく」「いと白き」など複数出てきます。

 

「をかし」=趣がある、すてきだ

「をかし」も、最もよく出る言葉の一つです。現代の「おかしい、変だ」という意味ではなく、「心がひかれる」「よい感じがする」という意味の言葉です。

清少納言は、自然や人のふるまいなどを見て、「をかし」と感じたことを枕草子にたくさん書いています。

 

「あはれ」=しみじみと心が動く

もう一つ、古文でよく出る言葉である「あはれ」を紹介します。

「あはれ」には「感動すること」「かわいそう、せつない」などの意味があります。うれしい気持ちだけでなく、さびしさや悲しさも含めて「心に深く感じる」という意味を表しています。「をかし」と似ていますが、「あはれ」はさびしさや悲しみで心が動くときに使われるところが特徴です。

 

 

枕草子の何がすごいの?【3つのすごいポイント】

枕草子は日本三大随筆の一つと言われています。一体、枕草子の何がすごいのでしょうか? ここからは、枕草子の「すごい!」ポイントにせまります。

 

①約1000年前の「日常」がわかる

清少納言は枕草子の中で、宮中での仕事や行事、貴族たちの会話、着物や手紙のやりとり、季節の楽しみ方、日々の食事など、生活の様子をくわしく書いています。また、平安時代の人が、どのような景色を美しいと思ったのか、どのようなことを楽しいと感じていたのか、どのような人がすてきだとされていたのか…など、当時の人々のものの考え方も書いています。

枕草子を読むと、当時の人々の暮らしや、価値観を知ることができます

清少納言は、自分が見たことや感じたことをくわしく書いているので、まるでタイムマシンのように、平安時代の世界をのぞくことができるのです。

  

 

②正直でおもしろい! 共感できる

清少納言は、自分が感じた「好き・よい」「嫌い・だめ」をはっきりと書いています。

 ひよこが鳴く様子はかわいい、定子様にほめられてうれしい

といったポジティブなことを書いている一方で、

 寝ようとしたときに顔の周りを飛ぶ蚊にイラつく、好きな人が元カノのことをほめるのはムカつく

といったネガティブなことまで、素直な気持ちをつづっています。

 

現代のSNSやブログと書いていることは変わらないかもしれません。

私たちと同じように、自分の気持ちを素直に書いていて、共感するところもたくさんあります。

約1000年前に生きていた清少納言と思いがつながるのは、不思議な気がしますね。

  

 

③短くて読みやすい

枕草子は、一つの長い話が続くのではなく、短い文章がたくさん載っています。一つ一つの話が短いので、気軽に読むことができます。

また、前から順番に読む必要もないので、読みたいところや気になったところだけを読むこともできます。

 

 

 

作者の清少納言ってどんな人?

枕草子を書いた清少納言は、どんな女性だったのでしょうか。清少納言の人物像にせまります。

 

頭がよくて、勉強が得意な女性だった

清少納言という名前は、宮中でよばれていた名前で、本名はわかっていません。

父親は有名な歌人でした。清少納言は小さい頃から和歌や漢字、文学に親しみながら育ったと考えられています。

 

定子に仕えていた

清少納言は、和歌や漢詩の知識が豊富で気のきいた会話も得意だったことから、定子にとても信頼されていたと言われています。また、枕草子の中で清少納言は、定子のことを「やさしい、気品がある、教養が深い」などと称賛しています。定子に関する記述もたくさんあることから、清少納言が定子を尊敬していたこと、二人の仲がとても良かったことがわかります。

  

 

紫式部と清少納言

同じ時代にもう一人、活躍した女性がいます。「源氏物語」(げんじものがたり)という小説を書いた紫式部(むらさきしきぶ)です。

紫式部も宮中で働いていましたが、紫式部は、彰子(しょうし)という別のおきさきに仕えていました。定子と彰子のまわりには、それぞれすぐれた人たちが集まっており、比べられることもありました。

こう聞くと「もしかして、清少納言と紫式部はライバルだったの?」と思う人もいるかもしれません。

紫式部は自分の日記に、清少納言のことを「頭がよくて才能がある」とほめる一方、「少し自慢しすぎることがある」と書いていますが、実際にライバルとして競い合っていたかはわかっていません。しかし、日記に書くくらいですから、意識していたのかもしれませんね。

 

 

まとめ 枕草子を読んでみよう!

いかがでしたか? 約1000年も昔に書かれた枕草子。「昔すぎて、読んでもわからないことだらけでは?」と思いがちですが、今読んでもクスっと笑えるところがあったり、清少納言の感性や考え方にも共感できるところがあったりと、とても楽しむことができる作品です。

おもしろい章段がたくさんあるので、気になった章段をぜひ読んでみてください!

 

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古文の10パターン!テストで役立つ読み方のコツ

  教科書で出てくる古文。 「なんだか昔の言葉で読みにくい……。」と思ったこと、ありませんか?   でも実は、古文には“決まったパターン”があるのです。 今回は、教科書や入試によく登場する古文の10パターンを、例文と現代語訳つきで解説します。読み進めながら「これ、他の作品でもあった!」という発見がきっとあるはずです。     もくじ パターン1:クスッと笑えるオチのある話(徒然草) パターン2:たとえ話の言いたいことは(伊曽保物語) パターン3:おどろくべき正体(徒然草) パターン4:思いがけない奇跡(今昔物語) パターン5:芸は身を助ける(宇治拾遺物語) パターン6:機転を利かす(沙石集) パターン7:ものの見方が個性的(枕草子) パターン8:生き方の知恵を語る(徒然草) パターン9:過去に学ぶ(花月草紙) パターン10:歌にこめられた思い(伊勢物語) 平安時代の恋愛観と結婚の流れ 古文のパターンを引用元の作品から推測しよう! 古文のパターン早見表 おわりに:「でも、どうやって覚えたらいいの?」       パターン1:クスッと笑えるオチのある話(徒然草) 獅子と狛犬 『徒然草』より   (神社に参った上人は、社の前の獅子と狛犬がたがいに後ろ向きに立っているのを見て、「大変すばらしい、深いわけがあるのだろう」と涙ぐんだ。上人はその理由を知りたがり、年配で詳しそうな神官を呼び、尋ねた。)   古文 「この御社の獅子の立てられやう、さだめて習ひあることに侍らん。ちと承らばや」と言はれければ、 「そのことに候ふ。さがなき童べどもの仕りける、奇怪に候ふことなり」とて、 さし寄りて、据ゑなほして去にければ、上人の感涙いたづらになりにけり。   現代語訳 「このお社の獅子の立てられ方は、きっといわれがあることでございましょう。少々お聞きしたいものです」とおっしゃったところ、 「その事でございます。いたずら好きな子供たちがいたしましたことで、けしからぬことでございます」と言って、 (獅子と狛犬に)近寄って、(元のように)置き直して行ってしまったので、上人の感動の涙はむだになってしまった。   読解ポイント 偉い立場の人が勘違いして失敗する展開は古文によくあります。「誰が」「どうした」を正しく読み取ることが、話の面白さをつかむカギです。 この場合は上人という宗教上で偉い立場の人が勘違いしたという点がくすっと笑えるポイントですね。         パターン2:たとえ話の言いたいことは(伊曽保物語) 例)鼠の会議『伊曽保物語』より (鼠たちが会議をした。猫につかまらないためには、猫の首に鈴を付ければよいという意見にみんな賛成した。)   古文 「然らば、このうちよりだれ出てか、猫の首に鈴を付け給はんや」といふに、 上臈鼠より下鼠に至るまで、「我付けん」といふ者なし。 是によつて、そのたびの議定事終わらで退散しぬ。 其ごとく、人のけなげだてをいふも、只畳の上の広言なり。   現代語訳 「そうしたら、この中からだれが出て行って、猫の首に鈴をお付けになるか」と言ったところ、 身分の高い鼠から身分の低い鼠に至るまで、「私が付けよう」と言う者はいない。 これによって、そのときの協議の決着はつかず解散した。 このように、人が勇気のあるようなことを言うのも、ただ安全な畳の上に座って大きなことを言うようなものである。   読解ポイント 古文のたとえ話は、ことわざや教訓とつながることが多いです。 会話文や主語に注意してエピソードの内容をしっかり読み取ったうえで、そのエピソードを通して筆者が言おうとしていることをとらえましょう! この話では「口で言うのは簡単だが、実行は難しい」という教えを示しています。         パターン3:おどろくべき正体(徒然草) 二人の武士『徒然草』より (なんとかの押領使というものは、大根がすべての病気にきくと信じて、毎日食べていた。ある時、館が敵に襲われたが、二人の武士が突然現れ、追い払ってくれた。)   古文 いと不思議に覚えて、「日ごろここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふはいかなる人ぞ」と問ひければ、 「年ごろ頼みて、朝な朝な召しつる土大根らにさぶらふ」といひて失せにけり。 深く信をいたしぬれば、かかる徳もありけるにこそ。   現代語訳 (押領使は)とても不思議に思われて、「日ごろこの館に仕えていらっしゃるとも思われない人たちが、このような戦いをなさるとは(あなたがたは)どういう人ですか」とたずねると、 (二人の武士は)「(あなたが)長年頼みにして、毎朝召しあがった大根たちでございます」と言って消えてしまった。 深く信じていたので、このような恩恵もあったのである。   読解ポイント 人間だと思っていた人物が実は別の存在だった、という展開は古文の定番です。 また、このような話では主人公が恩恵をうけるという話も多く、いいことをしたからいいことが返ってくるというパターンは覚えておきましょう! 「鶴の恩返し」などの昔話も同じパターンです。         パターン4:思いがけない奇跡(今昔物語) 真夜中の泣き声『今昔物語』より (夜の見回りをしていた人は、草むらから泣き声が聞こえた。草むらへ向かうと、怪しげな男がいたので、つかまえた。なんと盗人がその寺の弥勒菩薩の銅像を盗んでこわそうとしていたのだ。見回りをしていた人が盗人を捕らえて、役所につき出し、牢屋に閉じ込めた。)   古文 天皇にこの由を奏して、仏をば取りて、本のごとく寺に安置し奉りつ。 これを思ふに、菩薩は血肉を具し給はず。豈に痛み給ふところあらむや。 しかるに、ただこれ凡夫のために示し給ふところなり。 「盗人に重き罪を犯さしめじ」と思ひ給ふためになり。   現代語訳 天皇にこのことを申し上げて、仏を取り返して、もとのように寺に安置し申し上げた。 このことを思うと、菩薩は肉体をもっていらっしゃらない。どうしてお痛みになるところがあろうか(、いや、ないはずだ)。 だとしたら、ただこれ(=菩薩が泣き叫んだこと)は、凡夫にお示しくださったのだ。 「盗人に重い罪を犯させないようにしよう」とお思いになったため(に泣き叫んだの)だ。   読解ポイント 仏教の教えを広めるために書かれたお話を「仏教説話」といいます。 極楽や地獄の話、ありえない奇跡の話など不思議な話も多くあります。 信仰や徳が奇跡を呼ぶという展開がよくあります。 今回は菩薩の不思議な力についての話でしたね。         パターン5:芸は身を助ける(宇治拾遺物語) 内裏の立て札『宇治拾遺物語』より (内裏に「無悪善」と書かれた札がたてられていた。嵯峨天皇に命じられて、小野篁がしぶしぶ札の言葉を読むと、読めてしまったので、札を立てた犯人だと疑われてしまった。)   古文 「さればこそ、申し候はじとは申して候ひつれ」と申すに、 御門、「さて何も書きたらん物は読みてんや」と仰せられければ、 「何にても読み候ひなん」と申しければ、片仮名の子文字を十二書かせ給ひて、 「読め」と仰せられければ、「ねこの子のこねこ、ししの子のこじし」と読みたりければ、 御門ほほゑませ給ひて、事なくてやみにけり。   現代語訳 (篁が)「だから、申し上げますまいと申しましたのに」と申し上げると、 御門(=嵯峨天皇)は、「では何でも書いたような物は読めるのだろうか」とおっしゃったので、 (篁は)「何でも読みましょう」と申し上げたところ、(御門は)片仮名の「子」という字を十二個書かせなさって、 「読め」とおっしゃったので、(篁は)「ねこの子のこねこ、ししの子のこじし」と読んだので、 御門はほほえまれて、何事もなく済んだのだった。   ※片仮名:当時は「子」という文字を片仮名の「ネ」として使用していた。   読解ポイント 特技や教養がピンチを救う場面です。 昔は和歌や漢詩などの文化的教養が、人生を左右するほど重要でした。 今回は小野篁の漢文の知識が役に立ったお話ですね。         パターン6:機転を利かす(沙石集) 毒の飴? 『沙石集』より (児は「食べたら死ぬ」と言われて、坊主がどうしても食べさせてくれない飴をなんとしても食べたかった。 そのため、坊主がいない間にこっそり食べて、そののちに坊主の大事にしていた水瓶を割った。坊主が帰ってくると、泣いたふりをして、語りだした。)   古文 「大事の御水瓶を、あやまちに打ち割りて候ふ時に、いかなる御勘当かあらむずらむと、口惜しく覚えて、命生きてもよしなしと思ひて、 人の食へば死ぬと仰せられ候ふ物を、一杯食へども死なず、 二、三杯まで食べて候へどもおほかた死なず。 果ては小袖につけ、髪につけて侍れども、いまだ死に候はず」とぞ言ひける。 飴は食はれて、水瓶は割られぬ。慳貪の坊主得るところなし。 児の知恵ゆゆしくこそ。   現代語訳 (小児は)「大事にされていた御水瓶を、まちがって割りましたときに、どのようなおしかりがあるだろうかと(思うと)、残念に思って、生きていてもしようがないと思って、 人が食べると(必ず)死ぬとおっしゃいました物を、一杯食べたけれど死なない、二、三杯まで食べましたけれど全く死なない。 最終的には小袖につけ、髪につけましたが、まだ死にません」と言った。 (坊主にとっては)飴は食われて、水瓶は割られた。 けちな坊主には(損ばかりで)得るところがない。 児の知恵はすばらしいものだった。   読解ポイント 飴を食べるために機転を利かせて、結果的に状況を有利にする展開です。 一休さんのとんち話も、このパターンに近いです。 実際には、児は「食べたら死ぬ」と言われていたものを食べてから坊主の秘蔵の水瓶をわざと割っていますが、 機転を利かせて、水瓶を割ってしまったから「食べたら死ぬものを食べた」としているのですね。         パターン7:ものの見方が個性的(枕草子) 五月の山里散策 『枕草子』より (筆者は山里を散策することについて語っている。)   古文 左右にある垣にあるものの枝などの、車の屋形などにさし入るを、 急ぎてとらへて折らむとするほどに、 ふと過ぎてはづれたるこそいとくちをしけれ。 よもぎの、車に押しひしがれたりけるが、輪の回りたるに、近ううちかかりたるもをかし。   現代語訳 左右にある垣根にある何かの枝などが、牛車の人が乗る部分などに入ってくるのを、 急いでつかんで折ろうとするうちに、 すっと通り過ぎてはずれてしまうのは、とても残念だ。 よもぎの、牛車(の車輪)に押しつぶされたのが、車輪が回るときに(くっついて持ち上がってきて)、近くに引っかかっているのもおもしろい。   読解ポイント 日常の何気ない情景を面白く感じる感性が表れています。 枝が手に入らず「残念」と思う感情や、つぶされたよもぎが引っかかることを「おもしろい」と感じる感性です。 このような文章では「作者が何を面白いと感じたのか」を読み取ることが大切です。         パターン8:生き方の知恵を語る(徒然草) 形からでも 『徒然草』より (筆者は物に触れることが行動を呼び起こすと説いている。信仰心がなくても、仏の前に座り、数珠を手に取り、経文を手に取ると、自然とよい行いができる。乱れた心のままでも、座禅用の椅子に座れば、重いかげず禅定の境地に入るだろう。)   古文                                                                                                  事理もとより二つならず。外相もし背かざれば、内証必ず熟す。 しひて不信を言ふべからず。 仰ぎてこれを尊むべし。   現代語訳 (仏教において)現象と真理はもともと二つのものではない。外部に現れた姿がもし(仏教の教えに)背かなければ、内心の悟りも必ず成熟する。 (形だけだからと)一概に不信心だと言ってはいけない。 敬ってこれを尊いものと(して大事に)するべきである。   読解ポイント 古文には現代でも通用するような「生き方の知恵」が書かれているものがあります。 今回は概念的な文章で少し難しいかもしれませんが、「形から入ることの大切さ」を説いた内容ですね。 行動の形を整えることで、心や考え方も変わるという教えです。 ほかにも『徒然草』に掲載されている「高名の木登り」というものでは、「失敗は簡単なところで必ず起こるものだ」という知恵が書かれています。         パターン9:過去に学ぶ(花月草紙) 用心する男 『花月草紙』より (遠くの火事にも用心していた男は、周りの人々に日々笑われていた。ある日、はるか遠くの火事が男たちの住むあたりまで広がり、人々はすべてを失い、困って果てていた。)   古文 かのをのこ、したりがほにて、「かしてまゐらせん」とて、 かの縄を引きたぐれば、はさみよ、くしよなどいふもの引きあげつ。 また袋のうちより、うつはものなど出だしつつ、 「つねづね人にわらはれずば、いかでかかるときはほまれしつべき」と言ひしを、「げにも」と言ひし人ありしとぞ。   現代語訳 その男が、得意げな顔で、「貸してあげましょう」と言って、 あの縄を引き寄せると、はさみや、くしなどといったものを引きあげた。 また袋の中から、食器などを出しながら、 「ふだんから人に笑われなければ、どうしてこのようなときに名誉に思えるだろう」と言ったのを、「(なるほど)その通りだ」と言った人がいたということだ。   読解ポイント 日頃の備えや過去の経験から学ぶ重要性を説いていますね。 今回引用した『花月草紙』は「随筆」と呼ばれるジャンルです。 「随筆」は筆者の体験や考え、見聞きした出来事などが書かれています。         パターン10:歌にこめられた思い(伊勢物語) 筒井筒『伊勢物語』より (結婚から数年後、女の親が亡くなり貧しくなると、男はほかに妻をもうけた。女が気にしていない様子なのを見て、女の浮気を疑った男は、新しい妻のもとへ行くふりをして植え込みに隠れて女の様子をうかがった。)   古文 この女、いとよう化粧じて、うちながめて、 風吹けば沖つしら浪たつた山 夜半にや君がひとりこゆらむ と詠みけるを聞きて、かぎりなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。   現代語訳 この女は、とても念入りに化粧をして、物思いにふけって、 風が吹くと沖の白波がたつ、その「たつ」の名をもつものさびしい龍田山を、 夜中にあなたはひとりでこえているのでしょう。 と詠んだのを聞いて、(男は)この上なくいとおしいと思って、河内(の国にいる新しい妻のところ)へも行かなくなってしまった。   ※河内:現大阪府 龍田川:奈良県にある、大和(現奈良県)と河内(現大阪府)の間にある要路で険しい山のこと。 つまり河内にいるほかの女に会いに行こうと彼は今、龍田川を越えているのだろうか、と物思いにふけっているということですね。   読解ポイント 和歌は短い中に深い感情を込めます。恋や別れ、自然を題材にした歌は、入試頻出です。         平安時代の恋愛観と結婚の流れ ここで平安時代の貴族の恋愛について少しふれましょう。 平安時代の貴族の恋愛・結婚は今の恋愛とは全く異なります。 古文作品を読むうえでは必須の知識ですので、しっかりと押さえておきましょう。   恋愛から結婚までの流れ  ①男性が女性の噂話を聞く    顔を見たことがなくとも、美しい女性、教養のある女性の噂を聞きます。  ②男性が和歌を書いた手紙(文)を送り、女性に思いを伝える    この和歌の出来や、筆跡がどのような男性か判断する大きな材料となりました。  ③女性が手紙を読み、いいなと思ったら返事をする    「返歌」と呼ばれるものですね。  ④手紙のやり取りを続け、男性が女性の家に来る  ⑤三日連続で男性が家に来たら結婚成立   和歌のやり取りは、物語・日記文学に数多く描かれます。   一夫多妻制だった平安時代 現代の日本では一夫一妻制が一般的ですが、当時の貴族社会では一夫多妻制が普通でした。 色々な場所に妻がいるのが普通なのです。 このため、古文の恋愛物語では、男性が別の女性のもとへ通ったり、女性がそれを切なく思ったりする場面がよく出てきます。         古文のパターンを引用元の作品から推測しよう! 多くの場合、教科書や試験問題には引用元が明記されています。 そこから「この作品なら、こんなパターンの話かな」と想像しながら読むと、内容の理解がぐっとスムーズになります。     たとえば――  パターン1:クスッと笑えるオチのある話    → 『徒然草』のような随筆や、『古今著聞集』『宇治拾遺物語』といった説話集に多く見られます。    パターン4:思いがけない奇跡(仏教説話)    → 『今昔物語集』はもちろん、『発心集』や『沙石集』など、仏教説話を多く収めた作品に頻出です。    パターン9:過去に学ぶ    → 平安時代の『枕草子』、鎌倉時代の『方丈記』、同じく鎌倉時代の『徒然草』は「日本三大随筆」と呼ばれ、このパターンがよく見られます。      江戸時代の松平定信『花月草紙』や本居宣長『玉勝間』などの随筆でも同様です。     もちろん、作品の傾向はあくまで目安です。 必ずしも同じ作品が同じパターンになるとは限りません。 ですが、引用元を手がかりにパターンを予想することは、古文読解の大きな助けになります。         古文のパターン早見表         おわりに:「でも、どうやって覚えたらいいの?」 古文は今回紹介したパターンを知っておくと、ぐっと読みやすくなり、 練習すれば、より、スラスラと読めるようになります。   わからないをわかるにかえる 中学 国語 古文・漢文 1~3年 本テキストでは、今回の10パターンをより丁寧に、練習問題付きで解説しています。 それぞれの特徴をおさえながら取り組むことで、 テストや入試に出てくる初めて目にする古文が、どのパターンかを考えて対応できる力が身につきます。   ▶シリーズページはこちら ▶ご購入はこちら       【今回の執筆者】 イニシャル:MS 年代:20代 ~ひとこと~ 大学でも古文を勉強していましたが、とっても面白く、奥深い世界でした。