秋の夜長に落語はいかが?
こんにちは♪
すっかり日がくれるのも早くなり、夜のおうち時間も長くなっている今日このごろ…そんな時は「落語」を聴いてみませんか?
実は最近、青少年向けの落語イベントが増えてきたり、某少年漫画誌で落語をテーマにした連載が始まったりして、ちょっとしたブームになってきているのです。
今回は、そもそも落語って?というところから、おすすめの落語ネタ(演じる話のこと)まで、落語の魅力をたっぷりとお伝えいたします!
1)そもそも落語とは?
戦国時代、武田信玄や織田信長などの戦国大名が、教養を高めるためにそばに仕えさせた「御伽衆(おとぎしゅう)」。
彼らが気の利いたオチのある小咄(こばなし)をしたのがそもそもの始まりとされています。
その後、安土桃山時代に安楽庵策伝(あんらくあん・さくでん)というお坊さんが登場し、説法がとても上手で聞く人の心をつかむことを心得ていたことから、現在ではこの人物が「落語の祖」と言われるようになりました。
策伝和尚は『醒睡笑(せいすいしょう)』という笑い話をまとめた本(たまに高校入試に出ます!)を出していますが、その中には「子ほめ」など、現在にも伝わる演目の元になっている話があります。
江戸時代前期には、京都に露の五郎兵衛(つゆのごろべえ)、大阪に米沢彦八(よねざわひこはち)、江戸に鹿野武左衛門(しかのぶんざえもん)という、お金を取って落語をやる「職業落語家」が同時多発的に現れました。彼らが現在の落語家の元祖と言われています。
2)落語で想像力がきたえられる!
演劇などとちがい、落語はひとりの人物がたくさんの役を演じなくてはなりません。
衣装も替えてはならず、また、使う小道具は扇子(せんす)と手ぬぐいのみ!
このような演芸は世界的に見てもとても珍しいようです。
限られた道具でいろんな話を表現しなくてはならないため、落語家は仕草や声色(こわいろ)、目線の向け方などを非常に細部まで工夫して演じます。
たとえば…
上下(かみしも)を切る
話の登場人物を、顔を左右に振ることにより演じ分ける方法です。
立場が上の人(お殿さまや大家さん)が話す場合は舞台の下手(左側)、立場が下の人が話す場合は上手(右側)を向いて話します。
大ベテランの落語家だと、ちょっとした動きであたかもその場に2人の人物がいるように錯覚(さっかく)してしまうことも!
扇子(せんす)と手ぬぐい
落語の小道具として欠かせないのが扇子と手ぬぐいです。
扇子は演目によってお箸(はし)になったり筆になったり手紙になったりと変幻自在です。
また、手ぬぐいも同じく手紙、お財布、はたまた丸めておイモにもなっちゃいます…!
この二つが小道具として今も生きているのは、たたんだり広げたりして形を自由に変えられるのが理由のようです。
余談ですが、筆者はある落語家さんが手ぬぐいを「パンツ」に仕立てているのを見ました(笑)。
落語家の工夫が見事であればあるほど、観客も想像力がどんどん広がってその世界にひたることができるのです。
3)「じゅげむ」だけじゃない!おすすめのネタ
「じゅげむ」といえば、教科書にものっているぐらい有名な落語のネタ。
生まれた子どもの長生きを祈って、「じゅげむじゅげむ……」から始まるおめでたい名前を全て付けてみたものの、名前が長すぎていろいろとめんどうなことが起こるという、ゆかいな話です。
落語入門編としてこれさえ知っていれば!というものではありますが、それだけではモッタイナイ!
落語にはほかにもおもしろいネタがたくさんあります。いくつか紹介しましょう。
☆時そば
江戸時代、そばの立ち食い屋台(移動式)がはやっていたころ。
夜中にそば屋を呼び止めた口のうまい男が、看板からドンブリからそばの味までさんざんほめちぎり、最後に「いくらだい?十六文か。細かいのしか持ってないんだ、一つ、二つ、三つ、…八つ、今なんどきだい?」「九つで」「とお、十一、十二、…」と、一文うまくごまかしてしまう。
それを見ていた男、自分もマネしようとするが…?
ちなみに、「九つ」は昔の時間の数え方で、深夜0時のことを表します。落語家によってそばを食べる表現がまったく違うので、それも楽しめるお話です。
☆抜け雀(すずめ)
あるびんぼうな旅館に泊まった絵師が、宿代を払う代わりに衝立(ついたて。部屋と部屋をしきるもの)に描いた五羽の雀。
なんと、朝になると絵から抜けて飛び立ち、しばらくすると戻ってきて収まる不思議な雀だった!
たちどころに評判になり旅館がはんじょうするように。
しかしある日、旅館を訪ねた立派な身なりの老人。「この雀は弱っておる…」と言いだして?
衝立から抜け出す絵の雀を想像するだけでわくわくする、ファンタジーあふれるお話です。
☆お菊の皿
江戸時代から伝わる有名な怪談(かいだん)「番町(ばんちょう)皿屋敷」。
主人が大事にしていた皿を1枚盗んだというぬれぎぬを着せられて殺された女中のお菊が、夜な夜な幽霊となって現れるというお話です。
近所の廃屋敷にそのお菊が現れるとうわさを聞きつけた町内の若者たち。
怖いもの見たさで忍び込んだところ、確かに「いちま〜い、にま〜い…」と皿を数えるお菊の姿が!
10枚組の皿のうち6枚まで数えたところで逃げだした若者たちですが、繰り返し通ううちに、だんだんそのスリルが病みつきになってきて…??
シリアスなはずの怪談話が、最終的にエンターテイメントに変わっていくのがなんともいえず面白い。
昔も今も、若者たちはホラー好きですね(・_・;
4)夏休み、ドキドキ寄席(よせ)体験!
筆者の小4息子、テレビで「笑点」を見ているうちに落語に興味が出てきたようで、「寄席(よせ)に行ってみたい!」と言いだしました。
寄席とは、落語や漫才、講談などが行われる演芸場のことです。東京には主に5カ所(新宿末廣亭・上野鈴本演芸場・浅草演芸ホール・池袋演芸場・国立演芸場)あり、大阪にも天満天神繁昌亭(てんまてんじんはんじょうてい)という場所があります。
そのうちの上野鈴本演芸場昼の部に行ってきました。大人は3,000円、小学生は1,500円でおよそ10〜14組の演芸が楽しめます。
寄席はだいたい昼と夜の2回開催されていますが、比較的昼の部のほうが子連れのお客さんが多いように思います。
また、演者さんも、客席に子どもがいる時は子どもにもわかりやすいネタにしてくれるなど、うれしい気遣いがあることも。
息子と行った時は、女性の落語家さんが「客席に子どもいるね〜」というような感じでいじって(?)くれて、ちょっとうれしかったです♪
そして紙切り芸の先生からはこんなサービスも!
たった1本のハサミで切り絵を作るとか、もう神業すぎる…
親子ともども、大満足の寄席体験でした!
最後に…
生の落語を見に行くのはちょっとしきいが高いかも…と思う方もいるかもしれません。
今どきはYouTubeや音楽ストリーミングサービスで落語の名演が公開されていることも多いので、興味があれば、ぜひ聴いてみてくださいね♪
おあとがよろしいようで…!
参考図書:
『マンガで教養 やさしい落語』(朝日新聞出版)
『新版 落語手帖』(講談社)
『あかね噺』(集英社)
[今回の執筆者]
イニシャル:F
所属:編集部 国語・日本語課
好きな落語:井戸の茶碗/あくび指南