教科書のタブレット化で学習はどう変わる?デジタル教科書の概要やメリット
みなさんの学校では「デジタル教科書」を使っていますか?
原状はまだ使っていない学校の方が多いですが、2024年度には学校現場での本格導入が予定されています。
近く、紙の教科書と併用して、PCやタブレット端末でも教科書を見ながら学ぶ時代がきます。
そこで今回は「デジタル教科書」について、メリットや利用の際の注意点をお伝えします。
目次
POINT
・2024年に学校現場で本格導入予定の「デジタル教科書」とは?
・デジタル教科書にはメリットもデメリットもある
・デジタル教科書によって、これから学習はこう変わる
1.教科書がタブレット化? 今話題の「デジタル教科書」とは
デジタル教科書と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
タブレットやPCで見られる動画やアニメーションなどが入った動きのある電子教材でしょうか?
実はそれ、厳密に言うとデジタル教科書ではありません。
デジタル教科書って何?
文部科学省が定める「学習者用デジタル教科書」とは「紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である教材」を指します。
一方で、動画やアニメーション、ドリルやワーク、参考資料などの機能は、「デジタル教材」にあたります。
このように言うと、デジタル教科書はただ紙の教材をPC・タブレットでも見られるようにしただけのように聞こえるかもしれません。
しかし、後から説明するように、デジタル教科書にはさまざまなメリットがあり、学び方に変化をもたらす可能性があります。
また、デジタル教科書は、デジタル教材と一体的に使用することでさらに大きなメリットが得られます。
デジタル教科書と「GIGAスクール構想」
文部科学省は全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」を推し進めており、いまやほとんどの小・中・高校で1人1台の端末が整備されました。
これにより、デジタル教科書を導入する環境が整い、文部科学省は2024年度から学習者用デジタル教科書の本格導入を目指すとしています。
デジタル教科書の導入状況
全国の公立の小中高校での学習者用デジタル教科書の導入状況は、地域によって差があるものの、2022年の3月1日時点の全国平均で36.1%です。
前年同日の平均値が6.2%であったことを考えると、1年間で急速に普及していることがわかります。
2024年の本格導入を目前に、この流れはさらに加速してゆくものと思われます。
2.タブレット化した「デジタル教科書」6つのメリット
デジタル教科書には、拡大縮小、ハイライト、共有、音声読み上げ、検索、保存など、さまざまな機能が付いています。
また、動画や音声などのデジタル教材と一体化したデジタル教科書もあります。
紙の教科書にはないこれらの機能やコンテンツは便利で、学習者に大きなメリットをもたらします。
ページを拡大できる
デジタル教科書では、ページや図の拡大ができます。
たとえば、地理の入り組んだ地図を大きく見られたら便利ですよね。
また、文字の大きさや背景色、テキストの色、行間・文字間隔を変更できる機能がある場合もあります。
学習者は、見やすく画面を調整することによって、学びやすくなります。
教科書に書き込み・修正ができる
紙の教科書に書き込みをした場合、きれいに消すのは難しいです。
しかしデジタル教科世であれば、書き込みやハイライトをしても簡単に修正できます。
また保存機能があるため、学習を進めるなかで重要だと思うポイントが変わった場合にも対応ができます。
共有の機能を使えば、他の人の書き込みを見ることもできます。
音声や動画を再生できる
デジタル教科書のなかにはデジタル教材と一体化して、音声や動画の機能などが付いているものがあります。
たとえば、教科書の内容に対応した算数・数学の立体図の展開・回転や、英語の音声認識機能、理科や社会の動画などの機能が、デジタル教科書に紐づいており、簡単に見られるようになれば、学習者は教科書の内容を理解しやすくなります。
荷物の軽量化・資源削減になる
紙の教科書を何冊も持ってゆくのは重たいですよね。
小学生は、なんと平均して約6キロものランドセルをかるって通学しているそうです。
デジタル教科書なら、いろいろな科目の教科書がタブレットやPC1台で見られるようになります。
また、紙の資源の削減にもつながるので、環境にも優しいです。
学力分析により効率的な指導につながる
デジタル教科書で学習した内容は、保存・共有することができます。
そのため、教師は学習者の学習履歴を見て学習内容の習熟の程度を把握したり、生徒の書き込みなどの内容から思考のプロセスを把握したしたりすることができます。
そして、それをもとに、生徒の理解度に応じて効果的な指導ができるようになります。
ユニバーサル対応で学びやすさが向上する
デジタル教科書を導入する目的のひとつは、特別な配慮を必要とする子どもたちの学習上の困難を減らすことにあります。
たとえば、拡大機能や音声読み上げ機能は視覚障害のある学習者の役に立ちますし、音声読み上げ機能や、文字の大きさ、背景色、テキストの色、行間・文字の間隔の変更機能などの活用は発達障害のある学習者の手助けになります。
これらのユニバーサルな機能は、特別支援教育での活用はもちろんのこと、通常の学級で学ぶ子どもたちにとっても便利なものです。
3.デジタル教科書を使用する際に注意したいこと
デジタル教科書は便利で学習効果が期待できる半面、利用にあたって注意が必要なこともあります。
健康を害したり、思わぬトラブルに巻き込まれたりしないためにも、デジタル教科書を使う際の注意点についても知っておきましょう。
タブレット端末に集中しすぎてしまう
デジタル教科書は強く子どもたちの興味を引きます。
その反面、端末の画面に集中しすぎてしまうという問題もあります。
手元の画面に集中しすぎるあまり、教師の話やクラスメイトの発表をおろそかに聞いてしまわないように気をつけましょう。
視力への影響が懸念されている
長時間近距離で画面を見続けることは、視力低下防止の観点から避けるべきです。
まばたきの回数が減るので、ドライアイの心配もあります。
デジタル教科書を利用する際は、画面から30㎝以上離れて見るようにしましょう。
また、30分に1回は20秒以上画面から目を離して目を休めたり、ずっと画面を見続ける学習が続いたりしないように気をつけましょう。
十分なセキュリティ対策が求められる
デジタル教科書の利用に限りませんが、 PCやタブレットはほぼインターネットに接続した状態で利用します。
ハッキングの可能性がないとは言えず、児童生徒の個人情報が流出してしまう心配があるため、十分なセキュリティ対策が必要です。
また、端末の紛失から情報流出する危険性もあります。
子どもたちがトラブルに巻き込まれないために、保護者も情報セキュリティの基礎知識を知りましょう。
使用制限の設定が必要になる
学校で支給されるタブレットやPCは学習のためのもので、デジタル教科書をはじめてとした教材を見たり、調べ学習をしたりするものです。
しかし、子どもたちはついつい学習に関係のないアプリのインストールをしたくなったり、Webサイトを見たくなったりします。
そのため、あらかじめ閲覧制限や機能制限などの設定をしておく必要があります。
故障や破損への対応を考える必要がある
デジタル教科書を見るためのタブレットやPCが故障や破損してしまうと、授業がストップしてしまう可能性があります。
また、タブレットやPCは高額なため、すぐに買いなおすわけにもいかない場合もあります。
どんなに壊さないように気をつけていても、壊れてしまう場合があります。
その場合の対応を考えておく必要があります。
4.教科書のタブレット化により子どもの学習はどう変わる?
デジタル教科書の導入が進むと、学ぶ内容は同じでも、学び方が変わります。
学び方が変われば、より主体的・協働的で深い学びが得られるようになります。
個人の学習の変化
デジタル教科書は、書き込みや図表等の抜き出しが簡単にできます。
そのため、書き込みや編集の作業をしながら、試行錯誤を深めてゆくことができます。
また、デジタル教科書の内容と紐づいたドリル・ワークなどのデジタル教材と組み合わせて利用することで、個人の習熟度に応じた学習が可能になります。
グループ学習の変化
デジタル教科書を利用すれば、グループ学習の場面で、より協働的な学びが可能になります。
たとえば、書き込み機能と共有機能を利用して、他の学習者と意見交換をしながら学びを深めてゆくことができます。
授業の変化
デジタル教科書を電子黒板などにつなぐことによって、授業のあり方にも変化があります。
電子黒板にデジタル教科書を投影し、教師が必要なところにハイライトをしたり、答えを隠して解答に至るプロセスを見せたりすることで、円滑に授業が進められるようになります。
また、生徒が書き込んだデジタル教科書を投影して、発表をしたり、議論を深めたりすることもできます。
5.まとめ
デジタル教科書の導入により子どもの能動的な学習が期待できる反面、懸念点や検討が必要な部分もあり、紙からの移行に不安を抱く方も少なくありません。
今後学習環境が変化するなかで、紙とデジタル教科書の違いやメリットデメリットを把握したうえで、デジタル教科書をうまく活用するようにしましょう。
【参考資料】
文部科学省「学習者用デジタル教科書について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm